「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし 波形メモリ音源編 その3

■同じ苦労をするなら・・・

なんだか波形メモリ音源をシミュレートしたプラグインはダメそうという結論に至ったわけですが・・・

「Chip32」であれ、「KORG Gadget」であれ、これらが使える環境であったとしても、そもそも「ゼビウス」や「ドルアーガの塔」の音色はその音源のパラメータを使って作るしかないわけで、まったく別のシンセで似た音色をつくるのと大して労力かわんなくねぇ?

という仮説に基づき作戦変更です。

当時の音色を再現するならシンプルなシンセが良い気がするので、Cubaseに標準搭載されているRetrologueを採用してみようかと思います。

Retrologueは3つのオシレータとフィルター、エフェクター、などが搭載されたアナログシンセサイザーのシミュレート音源なのですが、構造が分かりやすく扱いやすいので何とかなるでしょう。

というところで次回からは
「マッピー」の耳コピでも始めましょうかね。

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「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし 波形メモリ音源編 その2

■またもやプラグイン問題!?

さぁて、ナムコの名作たちを耳コピするにあたって「波形メモリ音源」を再現せねばならないわけですが、ファミコン音源編と同じく、CubaseのVSTプラグインで「波形メモリ音源」を再現したものが存在するのか?
さっそくGoogle先生に調べてもらうと・・・「Chip32」というのが良さそうです。

32バイトのウェーブテーブルに自由に波形が書き込めるようだし、ADSRもついてるし、ビット解像度を変えられるパラメータもあるのでレトロな雰囲気を醸し出すには良さそうな感じです。

・・・が!案の定32ビットプラグインなうえに、すでに開発停していてで64ビット化の兆しすらないのでCubaseの64ビット環境ではブラックリスト入り確定です。

「KORG Gadget」の「Kamata」という音源がまさにナムコ黄金期の波形メモリ音源を再現しているじゃあないか!!
とおっしゃられる方々もいらっしゃるでしょうが、Mac専用!ソフトということでWindowsユーザーの私は完全にハブられているのでございます。

さぁ、どうしたものか?
次回へ続く。

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「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし 波形メモリ音源編 その1

■「波形メモリ音源」ってなに?

サウンド制作ウラばなし ファミコン編に続きまして、波形メモリ音源編のスタートです。

そもそも「波形メモリ音源」ってなに?ってことですよね。

1980年代にナムコのアーケード基盤やNECのPCエンジンの音源として採用されていたのが有名ですが、その名の通り「波形」を「メモリ」に入れて鳴らす音源でしょう?ということです。

PCM音源に似ているんですが、80年代のハードウェアですから、大きな波形を扱えるわけもなく、Wikipedeiaによれば32バイト程度の波形が扱えるということなので、ピアノの音色をリアルに再現するとかボイスを再生するとかはまずできません。

一言で言うと「超性能が低いサンプラー」みたいなものですかね。
印象的にはPSGに毛が生えた程度の音ですがファミコンよりは多彩な音が出るといった感じです。

カタログIPオープン化プロジェクトでIPが開放されているタイトルの中では、ナムコ初期のアーケード作品が多くあるのですが、それらには「波形メモリ音源」が採用されており、ファミコン音源とはまた違った味わいのサウンドを奏でているのです。

・パックマン
・ギャラクシアン
・ギャラガ
・マッピー
・ディグダグ
・ゼビウス
・スカイキッド
・ドルアーガの塔
・ドラゴンバスター

超ド級の名作ばかりです。
さぁ、名作たちの耳コピを開始することにしましょう。

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「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし ファミコン編 その6

■「ワギャンランド」サンバホイッスルを再現

「ワギャンランド」のBGMの冒頭にはサンバホイッスルみたいな音があるのですが、単純に考えて「RP2A03」をサンプラーに取り込んだのだからモジュレーションで再現できるでしょ?・・・と甘く考えていたのが良くなかった。

そこで、原曲をよく聞くとほぼ正弦波っぽい音色にノコギリっぽいLFOをかけているように聞こえます。

NN-XTでモジュレーションの※1”LFO”を設定をしても、どうもしっくりいかない・・・というかあんまり似てない。

モジュレーション以外で普通に考えれば「※2”VSTエフェクト”でLFOエフェクトをかけてやること」が良い選択かなぁ~と思うのですが、ちょっと思い出しました。

たしかCubaseの標準シンセのRetrologueにシンプルで良い感じのLFOを設定するパラメータがあったような・・・

Retrologueを起ち上げて、まず正弦波をつくり、LFOのパラメータでノコギリ波を設定し、LFO周期を少し早めにしてあげたら、結構イイ感じの再現ができました。

ゲーム本編では「アニマルワールド」を選択しているとランダムで再生されるので聞いてみて下さいネ!

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ということでファミコン編はこれにて終了。
次回から波形メモリ音源編です。

※1”LFO”ロー・フリケンシー・オシレーターの略で波の周期で変調させることができる発振器のこと。
※2”VSTエフェクト”スタインバーグ社が開発した音声エフェクト規格のこと。

「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし ファミコン編 その5

■「ワギャンランド」どうしよ・・・

勢いに乗って「ワギャンランド」の耳コピ開始です。
・・・と思ったらいきなり「RP2A03」で不安な要素で上げていた自体に!

とにかく、スタッカートした音色がメインだし、アタックの緩やかなPAD系の音色もあるし・・・さらに冒頭のサンバホイッスルみたいな音とか。

ヤバい・・・とか言ってられないので「RP2A03」をいじくってみたのですが、どうにも埒が明かないので、このプラグインで再現するのはアッサリあきらめて、他の方法を考えます。

まずは「RP2A03」で4種類の矩形波と三角波を鳴らしてサンプリングを行い、PropellerHead ReasonのNN-XTというサンプラーに取り込んで再現する方針に変更することにしました。

A1~A6ぐらいでマルチサンプルにしてあげれば、そこそこ再現度は高いのではないでしょうか?

NN-XTで再現するうえで気を付けなければならないのは、※1”ポリフォニック”を1にして、いわゆるモノフォニックにしておくことと、※2”カットオフ、レゾナンス”のフィルターをかからないようにしておくことです。

3トラックにNN-XTを配置すれば、それぞれがモノフォニック音源のトラックで、合わせて3和音のいわゆるファミコン音源の雰囲気が出ると思います。

これで晴れてADSRもかけられるしモジュレーションも効く扱いやすいファミコン音源になりました。

いやぁ~ヨカッタヨカッタ・・・と耳コピを進めていたのですが、もう一つの懸案事項であるサンバホイッスルの再現という問題が残っていたのでした。
ということで次回につづく。

※1”ポリフォニック”一つの楽器で重複して鳴らせる音の数をポリフォニック数といい、1音だけだとモノフォニックとなります。
※2”カットオフ、レゾナンス”音をこもらせたり、明るくしたりできるパラメータのこと。

「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし ファミコン編 その4

■「ワルキューレの冒険」良い感じ?

SOCALABSの「RP2A03」を使ってさっそく「ワルキューレの冒険」を耳コピ開始です。

DutyCycleというパラメータで4種類の矩形波を切り替えることができて、三角波とノイズは別のパラメータがあって・・・ふむふむ一通りの音は出そうなのでゴリゴリ耳コピを進めてみると、なかなかクリソツにできあがりました!

ただ、「RP2A03」については不安な要素もいくつかあります。

第一に設定したパラメータをセーブできないという欠点があります。
(バグだと思う)
第二に※1”ADSR”がないのでスタッカートしたような音色やアタックの緩やかな音色が作れないというのも大きな欠点です。
第三に※2”モジュレーション”が効かないというのもMIDIで扱う上では大きな欠点でしょう。

※1 ADSRとはアタック、ディケイ、サスティーン、リリースの略で簡単に言うと音に表情をつけるパラメータのこと。
※2 モジュレーションとは音に揺らぎをあたえるパラメータのこと。

「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし ファミコン編 その3

■Cubaseの64ビット環境で使えるファミコン音源が無い?

まずは手始めにPSG音源、というかいわゆるファミコン音源ですね。

これについては「Magical 8bit Plug」というチップチューンで有名な音源があるので安心安心・・・と思っていたのですが!!

なんとCubaseの64ビット環境では32ビットプラグインはブラックリストに入れられていて使えないですと~!?

「Magical 8bit Plug」のHPによればMAC版は64ビット対応しているのですがWIN版はまだ対応が無いようです。

ということで慌てて調べた結果、SOCALABSの「RP2A03」というプラグインが64ビット環境でも動きそうです。

「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし ファミコン編 その2

■音源ごとに製作スタイルを変える

「トレジャー発掘!Diggers」ではレトロゲームのキャラクターたちのグラフィックをなるべく当時の雰囲気を出して再現するというものなので、サウンドについてもレトロな雰囲気を重視して3つの音源で鳴っているものに絞ってみました。

・PSG音源(ファミコン=「ワルキューレの冒険」「忍者じゃじゃ丸くん」など)
・波形メモリ音源(アーケード=「ゼビウス」「スカイキッド」など)
・FM音源(アーケード=「源平討魔伝」「ワンダーモモ」など)

まずは8ビットとかチップチューンとか言われるジャンルでもおなじみのファミコン音源の耳コピを開始しましょうか。

「トレジャー発掘!Diggers」サウンド製作ウラばなし ファミコン編 その1

■カタログIPオープン化プロジェクトってことは・・・

はい、ついにリリースされました「トレジャー発掘!Diggers」のサウンド製作ウラばなしを連続モノ風に始めてみようかと思います。

この作品は、バンダイナムコさんが行っているカタログIPオープン化プロジェクトというものに参加しておりまして、「マッピー」や「ドルアーガの塔」、「ディグダグ」などバンナムその他のIPを使って2次創作をするという素晴らしい企画でして、欲張りにも開放されている全39タイトルを網羅したゲームとなっております。

コレ幸いに、というわけではありませんが伝説のあの曲やこの曲を大手を振って耳コピしても良いし、アレンジしても良いんでしょう?と意気込んでサウンド製作に取り掛かることになりました。

ということでファミコン編からスタートです

【サウンドのはなし】Vol.06 – CRI ADX2LE ちょこっとレビュー-

はいど~も!ご無沙汰しております!!
ラディアスリーのサウンド担当 伊佐です。
さてさて今回は CRI ADX2LE をちょこっとレビューでもしてみようかと思います。

そもそも ADX2LE って何よ?という方のために簡単に説明すると・・・
ゲームにおけるサウンド再生のための各ハードウェア向け再生エンジンとそのエンジン専用のツール群、つまりミドルウェアということになります。

主だった特徴としては以下になります。

◆CRI ADX2LE

  1. 独自圧縮形式による容量圧縮、低 CPU 負荷。
  2. デザイナー主導で設定できるインタラクティブサウンドへの対応。
  3. エフェクト等による高品位なサウンド演出。
  4. Unity、Unreal 等マルチプラットフォーム対応。

これらの機能が前年度の年商が1千万以下であれば無償で利用、配布までできてしまうとのことで、個人開発しているインディーズ系デベロッパー向けのサービスです。
※1千万を超えるものは通常版の ADX2 に移行する。

私自身はセガ・サターンとかドリームキャストの開発を行っていた時に超初期の ADX を使ったことがあったのですが(当時、セガが CRI の母体である CSK 傘下だったこともあり、セガハードのゲーム開発ではデフォルトで使用できました)その後は使っていなかったので、今回改めて試用してみて「随分と進化したツールになったなぁ・・・」というのが正直な感想です。

特に AtomCraft という専用 GUI ツールで直感的に作業でき、エフェクトやパラメータの反映具合をプレビューしながら作りこんでいけるので、DAW を使用できる程度のユーザーであればすぐにでも仕事ができると思います。

また、ADX2LE は、インタラクティブサウンドにも非常に力を入れている点も特徴かと思います。

例えば、以前は自然な足音を鳴らすためには、微妙にピッチの異なる足音を複数作っておいて、プログラマが一生懸命ランダムに聞こえるように実装していたわけですが、ADX2LE では AISAC というインタラクティブサウンドの機能が仕込まれたキューをコールするだけでプログラマの負担が大幅に軽減されるようにできています。

それだけではなく、微妙なピッチの変化具合を AISAC のパラメータを調整しながらサウンドデザイナーが GUI ツール上でプレビューしながら作っていけるので、クオリティも上がるし、プログラマに渡して、実装して、確認して、また直して、という時間がほぼ無くなるので時間短縮にもつながります。

しかも1つの音素材からパターンを作り出すので単純に容量削減にもなります。

面白いのは AISAC のパラメータをプログラムからアクセスして制御できるので、リスニングポイントから音の発生源の距離をボリュームのパラメータとして制御してあげれば、それだけでそれっぽくなるし、左右のパン情報を入れてあげれば3次元的な表現が可能だし、もっと凝るなら距離や前後にいる時のパターンで EQ の低音域や高音域を調整してあげれば 3Dオーディオ的な表現もできてしまいます。

また、ADX2LE にはカテゴリという考え方があって、カンタンにいうと SE と BGM とボイスでカテゴリを作っておけばボイスが鳴っているときは SE、BGM のカテゴリのボリュームを下げてやることでダッキングさせたりすることができるというものです。

しかもカテゴリにも AISAC を適用できるので、例えばサウンドデザイナーがボリュームの下げ幅を設定しておけば、プログラマがボイスのキューと同時にカテゴリの AISAC のキューをコールするだけで SE と BGMにダッキングがかかるということになります。

以上、マニュアルをパラパラと読みながらちょこっと試した程度ですが非常に高機能で、特に AISAC を駆使すればかなり面白いことができそうな気がしますね。
ということで、今回はここまで!

次回はWwiseの試用レポートでも・・・
じゃ、また!!